『ブリング・ハー・バック』感想
心霊ホラー映画『TALK TO ME トーク・トゥ・ミー』で鮮烈な長編監督デビューを果たしたオーストラリアのYouTuber出身のダニーとマイケルのフィリッポウ兄弟監督による新作で『シェイプ・オブ・ウォーター』のサリー・ホーキンスをメインキャスに迎えたスリラー映画『プリング・ハー・バック』。
今回も『TALK TO ME トーク・トゥ・ミー』の時みたいに親を亡くしたハイティーンの兄妹が主人公ながら、不可解な行動をとる少年オリヴァーと弱視の妹パイパーの視覚障害をも巧みに使った新感覚のスリラーで、後半になると恐怖が増幅する!
主人公の兄アンディは妹パイパーが弱視という障害があることもあって後継人になりたいが、まだ辛うじて保護者が必要という状況と、サリー・ホーキンスが演じる里親のローラがとにかく気さくでいい人というのと、常に上半身裸で言葉を話さない不気味な少年オリヴァーの存在から何やら不気味な雰囲気を感じながら、次々と巻き起こる不可解かつ衝撃的な出来事を見ていき、後半は恐怖の確信へと変わる。
これはフィリッポウ兄弟監督の前作『TALK TO ME トーク・トゥ・ミー』が心霊ホラー映画であったことから、映画を見ている観客は「今回も心霊ホラーなのかな?」と上手いことおもうが、過去回想や妄想、あとオリヴァーの奇行もあるが、厳密には心霊ホラーではなく、観客の心理を利用したスリラーと行った方がいい。
これにサリー・ホーキンスが演じるローラのいい人っぷりが、変な怪奇映像を見たり、アンディに対する不可解な行動等の奇行を起こすことから、このローラにまつわることや過去の出来事がミステリー&スリラーへと変わり、後半から終盤に一気に面白くなる。
そして奇行を繰り返す少年オリヴァーに関しても色々と謎がある。そもそもなんでローラと暮らしているのかとか、やたらと外にいたり離れに隔離されたり、突如暴れたり、変な行動をするのか不可解だがそこにも仕掛けがある。そこはM・ナイト・シャマラン監督作品っぽい演出で、ローラの屋敷の敷地に描かれた謎の白い円やローラが見ている謎のオカルト映像やアンディとパイパーの兄妹の過去なども上手く恐怖の増幅の演出になっている。
さらにこの映画が上手いのはパイパーの弱視やアンディのトラウマを巧みに映像に利用していることにある。時折、パイパーの弱視の目線のような映像にしたり、アンディの様子から父からのDVやあるトラブルによるトラウマの心理症状が出ていたり、この危うさがスリラーとして良い演出になっている。
さらにはローラ役を『シェイプ・オブ・ウォーター』の主演だったサリー・ホーキンスにしたことも映画を見る観客への良いミスリードに繋がっている。あの時の好印象と本作の身寄りのない少年少女を熱心に親代わりになる様子など、前半は「あれ?この映画、スリラーとかホラーじゃなくてヒューマンドラマかな?」と疑ってしまうぐらい誤解釈を起こしつつ、兄妹の過去の出来事やオリヴァーの数々の奇行が怪奇現象なのかなという映画を見る側が錯覚まで起こしてしまう。
それと、ローラの兄妹やオリヴァーに対する行動は支配欲によるものがある。弱視のパイパーには優しく接し、兄のアンディには邪険に、時折イタズラめいた奇行をすることで心理的に追い詰め、支配していく様子は、最近の作品ではジェフリー・ラッシュ主演映画『ジェニー・ペンはご機嫌ななめ』に出て来たデイヴィッドの入居者の支配方法に通じるものがある。限られた敷地での軟禁に近い状態やちょっとファンタスティックな演出も『ジェニー・ペンはご機嫌ななめ』と近いものが感じられる。
つまり、フィリッポウ兄弟監督は映画の中の兄弟や序盤や中盤に出てくる社会福祉士のおばちゃん、さらには映画を見る観客の心理を上手くついて、これを恐怖に変換していく。よく考えればかつてM・ナイト・シャマラン監督がやっていたスリラーを引き継いだようなスリラー映画で、多少のファンタジーと強引さはあるが、極上の半密室スリラー映画である!
評価:9/10
《作品データ》
『TALK TO ME トーク・トゥ・ミー』を手掛けたダニー&マイケル・フィリッポウ監督によるスリラー映画。父親を亡くした弱視の少女パイパーは兄アンディと共に里親のローラのもとで暮らすことに。二人は彼女の家でローラと言葉を話さない少年オリヴァーと共に暮らすが、オリヴァーの奇妙な行動や、数々の不可解な出来事に遭い、アンディは徐々に憔悴する。里親のローラ役を『シェイプ・オブ・ウォーター』のサリー・ホーキンスが演じ、他ビリー・バラット、ソラ・ウォン、ジョナ・レン・フィリップス、サリー=アン・アプトン、スティーヴン・フィリップス、ミーシャ・ヘイウッドが出演。
・7月10日(金)より新宿ピカデリー他全国ロードショー【R15+】
・配給:ハピネットファントム・スタジオ
・上映時間:104分
【スタッフ】
監督・脚本:ダニー・フィリッポウ/監督:マイケル・フィリッポウ
【キャスト】
サリー・ホーキンス、ビリー・バラット、ソラ・ウォン、ジョナ・レン・フィリップス、サリー=アン・アプトン、スティーヴン・フィリップス、ミーシャ・ヘイウッド
原題:Bring Her Back/製作国:オーストラリア/製作年:2025年
・公式HP:https://happinet-phantom.com/bhb/

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